Naturescape® その存在哲学

私たちNaturescape®を従来の営利企業(for Profit)という枠で捉えると、位置付けることが非常に困難です。

私たちは、営利を第一目標におく今までの企業像とはまったく違う企業です。私たちの第一目標は「環境保全に寄与すること」です。私たちの使命(mission)は、自然環境を保全することにあります。私たちは「保全」を、繋がりを繋がりのままにあるがままをあるがままに残していくこと、と理解しています。決して人間にだけ都合の良いように造っていく(あるいは造り変えていく)こととは考えていません。このような使命を自覚する私たちが行うすべての事業は、この使命を達成するために位置付けられたひとつひとつのサブアクションです。利益はこの使命を達成するために使用されるものです。私たちにとって利益は目標ではなく、手段なのです。

こうした考え方は、経営学で論じられる非営利組織の経営論と大変近いところに位置しています。アメリカで1995年頃から注目されている社会的企業家(social entrepreneur)という企業像は、私たちの理念と主張をかなり上手に説明してくれているように思います。私たちはソーシャル・ベンチャー(social venture)と呼ばれる事業体であると理解されると思います。事実、私たちの投資家は私たちの事業の「社会的意義」を深く理解して投資して下さっています。

そこまで社会的ということに拘るならば、なぜ、NPO法人ではないのでしょうか?

これはNPO法人という存在が浸透してきた最近、よくご質問を受けます。私たちが日本の特定非営利活動促進法で定めるNPO法人という選択肢を採用していない理由は二つです。一つは現段階では株式会社法人の格の方が有利であると判断したからです。それは投資家からの投資を得るという点においても同じことです。二つ目は数年前までは、NPO法人という存在とその意義が今日ほど日本社会で浸透していませんでした。法律も未整備であった当時、NPO法人を選択するという選択肢はかなり困難な選択肢でした。もちろん、現在の日本社会での認識を考えれば、NPO法人という“格”も選択肢に入り得るでしょう。私たちにとっては“格”も、手段です。何がもっとも使命を達成する為に有効であるか、すべての判断はこの点において行われます。ですから、私たちの存在をNPOや市民活動と対立するものとして位置付けたり、NPOや市民活動の危機だと考えるのは、いささか的外れでしょう。

私たちの企業像−それは、新しい姿です。

私たちの存在は、それ自体、現代社会に対する大胆な挑戦だと自覚しています。それは創業時に掲げた企業理念の中に記された「環境保全で収益が得られる−これは理想なのかも知れませんが、これを証明することができれば、きっと他にも同じことをしてくれる人が現れるはず、そうなれば、もっと自然環境を守ることができるはず」に顕著に顕れています。そして、私たちの存在理由は、代表取締役のこの一言に集約されています。「会社はすべてお金儲けのためだけにあるものじゃない。新しい発想で新しい視点で会社を興す必要があるのです。そんな時代になっているのです。」

貨幣利得の最大化を是とする社会、他人を犠牲にして利益を得る社会、市場原理を最高原理とする社会、多様性を失いモノカルチャーに傾斜する社会、自然との調和を忘れ去った社会−このような現代社会に対する「存在」としての挑戦です。

私たちのこの社会は、多様なものを多様なままに受け止め、市場いうものがきちんと社会のなかに埋め込まれていた社会であったはずです。自然環境を保全するという私たちの使命は、元来人間の生計が埋め込まれていた市場経済を再び社会の中に埋める(re-embed)ことでもあるのです。私たちにとって、自然環境の保全は決して人間の諸活動と対立するものではなく、すべてが有機的にネットワークとなって繋がっていく“いのちのweb”として理解しています。そこには、生き生きとした共生が息づいているのです。

私たちの存在が、社会においてどのように理解され得るのか、それもまた壮大な実証実験と言えるでしょう。お判りのように私たちの挑戦の最終成果は、収益や「キャピタルゲインで大儲け」という成果ではありません(そうなることは無論拒みませんが、しかし、その儲けは再び社会に戻されます。儲けは元にもどさねばならないのです。換言すれば元にもどすための儲けです。)。最終成果は、社会での認知がもたらす後続の人々の存在が証明してくれるでしょう。ですから、私たちはベンチャー(Venture)です。しかし、おカネを儲けることが目的ではないのです。おカネ儲けは手段。あらゆる経営資源を注入して目指す私たちの目的は、使命(mission)=自然環境を保全することの達成にあるのです。

これが、私たちNaturescape®の存在哲学です。

additional information
社会起業研究会(小磯修二氏+(公財)秋山記念生命科学振興財団 ネットワーク形成事業)での基調講演(保存版)

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