事業評価・プロセスデザイン・プロセス評価を行って参りました政策シンクタンク業務に、EBPM支援というブランチが加わりました。 EBPM支援は、業務提携先である株式会社EBPM研究所との共同タッグによりお届け致します。同研究所は、地域経済・地域政策・地方財政を中心とする学術専門家集団です。詳しくは、同研究所 Webサイトまで。
EBPM概説
EBPM(Evidence Based Policy Making)とは、エビデンス(科学的根拠)に基づく政策形成のことです。
エビデンスとしては、ある事象とそれを発現させる要因となる行為・自然現象・物質等が挙げられます。具体的には、経済波及効果をもたらす特区・規制緩和・助成事業等、河川氾濫を誘発する降雨量・降雨パターン、公害を発生させる化学物質などがその一例です。新型コロナウィルスのパンデミックと人同士の接触頻度の関係も同様です。e-Stat等これまでに収集されてきたビッグデータを用いた統計解析やシミュレーションを通じ因果関係が確認されている事象は多数あり、政策立案のみならず、民間の需要予測等エビデンスの活用領域は広がりを見せています。
事業評価から見えてきたこと───手段としての妥当性評価の希薄さ
政策については、しばしば、前例や他所の事例を踏襲・模倣し立案・実施され、実施後に期待通りの成果が見られたかについては評価されることが少ないという指摘がなされてきました。こうした反省を踏まえ登場したのが事業評価です。 現在の事業評価では、「その事業にそれだけの費用を投じたのは妥当なのか」というB/C(費用便益)の観点から、効果の抽出と金額換算を中心とする効果測定に重点が置かれています。この方式は、投入費用の妥当性検証という意味においては一定の成果を挙げています。しかし、投入費用以前に着目すべきである「その課題解決には他にベターな方策はないのか」という方策自体の手段・方法論としての妥当性についての評価・検証はあまり進んでいません。その理由の1つに、「ベターな方策」を構築することが評価者自身に求められる、ということが挙げられます。
現実社会で事業評価を実施してみますと、「以前からやっているから」「他所でやられていたから」という理由である政策が選択・実施されているケースが少なくないことが分かってきました。「以前から」「他所で」の方策は、一見、成果が保証された安定志向の方式のようでもありますが、成果が検証されていたり方策を実施する時期や場所が変わっても同様の成果が得られるという再現性が担保されていたりするわけではありません。そのため、単に「以前から」「他所で」というだけでは、その方策の妥当性に論理的な根拠があることにはなりません。
EBPMは、方策の手段としての妥当性についてエビデンスをもって裏付けを図ろうとするものと位置付けられます。「○○指標の値によれば□□対策の必要性が高い」「□□対策には△△という方法を採れば多くのケースで実効的な課題解決が図られ○○指標に改善が見られている」、よって、「△△によって□□対策を行うことで○○指標の改善を図る」といった具合に論理的な根拠と具体的な手段を伴って方策(政策)を立案するということです。
事業評価とEBPMの関係性
ところで、弊社の事業評価は、プロセス評価を中心としています。 プロセス評価は、そのプロセス(方策・手段等)で課題解決に至ることができるのか、また、先に挙げた「ベターな方策」はないのか、を検証するものです。転ばぬ先の杖という意味では実際にそのプロセスを実施する以前に行う事前評価として実施するのが望ましいのですが、現実にはそのプロセスを実施した後の事後評価として実施するケースが多く見られます。 プロセス評価は、事前評価、事後評価、いずれで行うとしても、既に構築されたプロセスを対象とするものです。一方、構築済のプロセスではなく、プロセスをまさに構築せんとする段階(政策立案フェーズ・業務設計フェーズ)で設計・評価・検証を繰り返しながらプロセスをスクラップ&ビルドすることをプロセスデザインと云います。 プロセスデザイン、プロセス評価、いずれにおいても、課題解決のためのプロセスは複数立案します。そして、当該プロセスを実施することにより課題は解決され得るか、即ち、当該プロセスが課題解決手段たり得るか、また、当該プロセスが他の方策に比し実効性やコストパフォーマンスに優れているか、といった評価を経て「ベターな方策」を抽出します。 この評価にあたっては、しばしば、科学的知見に論理的根拠を求めます。EBPMにおいても、エビデンス(科学的根拠)となり得る要素を科学的知見の中から見つけ出そうとします。即ち、事業評価とEBPMは、共に、科学的な論理的根拠に基づいて課題解決手段(プロセス・政策)を構築しようとする、という点で同義です。
EBPMの民間への応用
EBPMやプロセスデザインは、主には政策領域で用いられる手法です。しかし、「科学的な論理的根拠に基づいて課題解決手段を構築する手法」と捉え直せば、民間の経済活動にも応用可能、むしろ、経済活動の実効性を担保する上で有益な手法、ということが理解されます。 例えば、相関解析といった統計学的手法を通じ、ある物品の売上趨勢と有意相関を有す要因指標を予め検出しておき、その要因指標の推移をウォッチすることで当該物品の市場動向を予測する、といったことです。 近頃では経済活動にも活用できるビッグデータの整備・蓄積・提供が充実してきており、経済波及効果の推計や産業関連表の抽出といった総体的な動向から、道路・橋梁・建物等のインフラマネージメントの需要予測といった個別具体的な事象の把握に至るまで、多様な用途に用いられるようになってきています。 需要予測の精度向上、ビジネスモデルの実効性向上・・・Evidence Basedはそれを支援します。
公共の政策立案や事業評価に限らず、民間の経営企画・経営戦略立案等の企業活動も含め、EBPMやプロセスデザインに関するお問い合わせ・ご相談は、弊社、若しくは、株式会社EBPM研究所までお申し付け下さい。
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